薬屋のひとりごと|第28話ネタバレと感想レビュー+中国史解説
作品情報
タイトル・著者・掲載誌
- タイトル:薬屋のひとりごと
- 原作:日向夏
- 作画:ねこクラゲ・七緒一綺
- 掲載誌:月刊ビッグガンガン/サンデーGX
ジャンル・世界観
ジャンルは後宮ミステリー×歴史風ファンタジー。仮想中国王朝を舞台に、薬と推理の要素が融合した知的サスペンスです。
導入(作品の雰囲気や魅力)
物語の特徴
後宮で下働きをする元薬師の少女・猫猫(マオマオ)は、ある日、皇帝の子どもたちが次々と病に倒れていることに気づく。毒の存在を疑った彼女の冷静な推理と豊富な薬学知識が、静かに謎を暴き始める――。その手腕を買われ、美貌の宦官・壬氏に見いだされてからは、後宮や宮中で巻き起こる不可解な事件の真相解明に奔走することに。 やがて、ただの薬師のはずだった猫猫の素性にも、ある秘密が浮かび上がる……。 ミステリーと歴史ロマンが交差する、知性と毒気に満ちた後宮エンターテインメント!
主人公・見どころ紹介
主人公は、元薬師の少女・猫猫(マオマオ)。後宮で下働きをしながらも、薬学の知識と冷静な観察眼で、次々と巻き起こる事件の真相を突き止めていく姿が魅力的。 決して表情豊かではないけれど、どこかとぼけた一面や、皮肉っぽいユーモアもじわじわ効いてくる個性的なヒロインです。 見どころは、ミステリーと人間ドラマの絶妙なバランス。 後宮という閉ざされた空間で起きる事件の裏には、人間の欲や愛憎が渦巻いており、ひとつの謎を解くたびに人物たちの思惑や秘密が明かされていきます。 美貌の宦官・壬氏との不思議な関係性も、物語にスパイスを加えるポイント。
ネタバレ内容(※注意!)
第28話
壬氏の悪ふざけに怒り心頭の猫猫だったが、気持ちを切り替え、高順に付き添われて金剛宮(里樹妃の居所)を訪れる。目的は、どうしても確かめたいことがあったからだった。
猫猫が里樹妃に尋ねたのは、「蜂蜜が苦手なのではありませんか?」という一言。問いかけに、里樹妃は驚きつつも事実を認めた。幼いころ蜂蜜で重篤なアレルギー反応を起こし、生死を彷徨ったことがあったのだ。それ以来、乳母や周囲の侍女たちから蜂蜜を避けるよう厳しく言い聞かされて育ったという。
さらに猫猫は、もう一つの質問を投げかける――「柘榴宮の侍女頭・風明に心当たりはありますか?」
その名を聞いた瞬間、里樹妃の顔に浮かんだ動揺が、言葉以上の答えとなって現れる。
その後、猫猫は高順に「探してほしい資料がある」と依頼する。猫猫は後宮に属するため、自由に外を動けない。代わりに高順が、宮廷の記録が保管されている書庫を訪れる。
そこには、16年前の出来事を記した文書が残っていた。
内容は、「乳幼児が死亡した事件」と、「当時の医官・羅門がその責任を問われて追放されたこと」――
羅門――それは、猫猫の育ての親である養父。
感想・考察
感想
第28話「蜂蜜 其の弐」では、前回までの伏線が一つずつ丁寧に回収されつつ、猫猫の過去や人物背景にも新たな光が差し込み、物語全体の厚みがぐっと増しました。
里樹妃とのやり取りでは、表面上は穏やかな会話ながらも、猫猫の観察力と質問の切れ味が光り、読者は「また何かが動き出した」と感じさせられます。そして終盤の、「16年前の事件」「追放された医官・羅門=猫猫の養父」という衝撃の事実。今まで猫猫の家庭環境は語られてきたものの、そのルーツに宮廷が関わっていたという展開にはゾクッとさせられました。
また、壬氏とのやりとりもユーモラスでありつつ、猫猫の怒りと理性のギリギリのラインが面白く、キャラ同士の温度差が絶妙です。
考察
蜂蜜というモチーフが、単なる“嗜好”ではなく、“命を落としかけた過去”の象徴として使われていた点が秀逸です。それは単なるアレルギーの話ではなく、猫猫が宮中の「食」と「毒」の関係に精通しているからこそ気づけた事実であり、物語のキーになっています。
また、蜂蜜は「甘い=好ましい」ものの象徴である一方で、アレルギーを持つ者にとっては「甘い毒」ともなりえる。この“二面性”が、本作にたびたび登場する“毒”のテーマとも呼応しています。
演出・テーマの読み解き
この話では、「蜂蜜を食べないように言い聞かせられてきた記憶」と、「実際に何が起きたのかという真実」が交差し、封じられていた記憶が呼び覚まされていきます。
これは単なる推理の過程ではなく、個人の過去と対峙し、そこから新たな真実に到達するという内面的な成長のテーマとも繋がっています。
猫猫自身のルーツもまた、「記憶の外側にある真実」によって揺り動かされようとしているのです。
関連作品・おすすめポイント
類似ジャンル作品紹介
- 後宮の烏(後宮探偵+神秘系)
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解説コーナー(史実や文化の知識)
古代中国の医官とは?
◆ 医官(いかん)とは
中国の宮廷には、古代より「太医(たいい)」と呼ばれる医官制度が存在しました。
これは皇帝や妃たちの健康管理・治療・出産の補助・薬の調合・毒見など、極めて重要な役割を担う職務で、現代でいえば王室の主治医のようなポジションです。
◆ 医官の地位と責任
医官は一見、高い知識と技術を持つ専門職ですが、政治的立場は決して安定していたとは言えません。もし診断ミスや薬の効果により貴族が亡くなった場合、医師がその責任を問われて罰せられることも珍しくありませんでした。
今回登場した羅門の追放も、そうした「結果責任」の一例です。たとえ本人に過失がなかったとしても、事件が起こればスケープゴートにされることがありました。
◆ 医官の養成と身分
医官は国家主導の医学院(後の太医院)などで育成され、試験に合格することで宮廷入りが叶います。
しかし出自によっては制限もあり、身分の低い者や女性は医官になれない場合も多かったのが現実です。猫猫のような女性の薬師が表に出るのは、特異な例といえるでしょう。


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