薬屋のひとりごと|第22話ネタバレと感想レビュー+中国史解説
作品情報
タイトル・著者・掲載誌
- タイトル:薬屋のひとりごと
- 原作:日向夏
- 作画:ねこクラゲ・七緒一綺
- 掲載誌:月刊ビッグガンガン/サンデーGX
ジャンル・世界観
ジャンルは後宮ミステリー×歴史風ファンタジー。仮想中国王朝を舞台に、薬と推理の要素が融合した知的サスペンスです。
導入(作品の雰囲気や魅力)
物語の特徴
後宮で下働きをする元薬師の少女・猫猫(マオマオ)は、ある日、皇帝の子どもたちが次々と病に倒れていることに気づく。毒の存在を疑った彼女の冷静な推理と豊富な薬学知識が、静かに謎を暴き始める――。その手腕を買われ、美貌の宦官・壬氏に見いだされてからは、後宮や宮中で巻き起こる不可解な事件の真相解明に奔走することに。 やがて、ただの薬師のはずだった猫猫の素性にも、ある秘密が浮かび上がる……。 ミステリーと歴史ロマンが交差する、知性と毒気に満ちた後宮エンターテインメント!
主人公・見どころ紹介
主人公は、元薬師の少女・猫猫(マオマオ)。後宮で下働きをしながらも、薬学の知識と冷静な観察眼で、次々と巻き起こる事件の真相を突き止めていく姿が魅力的。 決して表情豊かではないけれど、どこかとぼけた一面や、皮肉っぽいユーモアもじわじわ効いてくる個性的なヒロインです。 見どころは、ミステリーと人間ドラマの絶妙なバランス。 後宮という閉ざされた空間で起きる事件の裏には、人間の欲や愛憎が渦巻いており、ひとつの謎を解くたびに人物たちの思惑や秘密が明かされていきます。 美貌の宦官・壬氏との不思議な関係性も、物語にスパイスを加えるポイント。
ネタバレ内容(※注意!)
第22話
猫猫は3日間の里帰りの許可を得て、武官・李白とともに花街へ向かう。後宮からそれほど距離はないものの、猫猫は馬車を使うという贅沢な移動手段にやや落ち着かない様子。一方の李白は、憧れの妓女に会えるとあって上機嫌。思わず鼻歌まで飛び出すほど。
花街に入り、猫猫は自身が育った妓楼「緑青館」へ向かう。ここは中級から最上級の妓女が在籍する一流の店であり、猫猫にとっては懐かしい場所だ。館に着くと、猫猫は「小姐」と慕う妓女たちや、やり手婆(妓楼の管理人)と再会する。李白を紹介するやり取りの中で、やり手婆は「白鈴を呼んでおいで」と禿(かむろ)に命じ、李白を上階へ通す。
その一方で、やり手婆は商魂たくましく、白鈴の紹介料として猫猫に代金を請求する。だが猫猫の手持ちは足りず、支払いができないことが判明。するとやり手婆は、「妓女になりたくなければ、李白のような金払いの良い客をもっと紹介しな」と冗談とも本気ともつかない口調で迫るのだった。
その後、猫猫はようやく“おやじ”のもとへと向かう。彼は猫猫の養父であり、薬師として花街に根付いた人物。猫猫が後宮に入った経緯や、そこで経験した出来事を話すと、おやじは静かに「後宮か。因果だねえ」とつぶやく。猫猫の数奇な運命を思いながら、二人は久しぶりの再会の時間を過ごすのだった。
感想・考察
感想
煌びやかで猥雑、けれどどこか温かい空気が流れるその場所は、猫猫にとって“帰る場所”であり、“過去”であり、“自由”そのものでした。
後宮という閉ざされた異世界で、抑圧と陰謀に囲まれながら生きていた猫猫が、ようやく息をつける――そんな開放感に満ちた一話です。
李白の鼻歌……まさか、あんなに浮かれて花街へ来るとは(笑)
軍人としての顔から一変、ただの男に戻った瞬間の可笑しさと哀愁に、思わず口元が緩みます。猫猫がまるで紅一点のプロデューサーのように、李白を手のひらで転がしている構図も絶妙で、この二人の距離感がたまらなく面白い。
そしてラストの、養父との再会。
「因果だねえ」とつぶやくおやじの一言が、猫猫のこれまでの数奇な人生に静かに重なり、胸にじんわりと余韻を残します。
笑って、楽しんで、最後にちょっと泣ける――
まさに“猫猫の日常”が戻ってきた、優しくも鮮やかな一話でした。
考察
今回の話では、猫猫という人物の出自と現在地との「距離感」がテーマのひとつといえます。
花街で育ち、薬の知識を身につけた猫猫が、後宮というまったく異なる世界に身を置くことは、一見「階層の上昇」のようにも見えますが、本人にとってはそれほどの意味はなく、むしろ早く元の世界に戻りたいという意志が強く感じられます。
李白とのやりとりや、やり手婆との交渉でも見せた“したたかさ”と“無欲さ”は、猫猫がどこにも「染まっていない」ことの証です。そして、彼女が「どこにでも適応できてしまう」能力こそが、皮肉にも彼女を数奇な運命へと導いているとも言えるでしょう。
演出・テーマの読み解き
この話の裏テーマは「居場所と帰属意識」だと考えられます。
猫猫が育った場所と、現在の居場所(後宮)。どちらも彼女にとって“完全に安心できる場所”ではありません。それでも彼女は、どこかに「戻れる場所」があるという安心感を持って生きている。その象徴が花街であり、おやじの存在です。
また、李白ややり手婆といった花街の人々との再会を通じて、猫猫自身が「自分の足で生きている」ことを確かめる回でもあります。後宮での生活に流されることなく、自分の意志で動ける猫猫の芯の強さが光る一話です。
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解説コーナー(史実や文化の知識)
禿(かむろ)について?
◉ 日本における「禿(かむろ)」
日本では、「禿(かむろ)」とは江戸時代の遊郭において、年若い見習いの少女を指しました。
将来的に花魁や妓女になる前段階で、すでに花魁の付き人のような役割を果たし、着物の着方や礼儀作法などを学びながら育てられました。見た目も特徴的で、丸髷(まるまげ)や肩上でそろえた髪型など、少女らしさを強調する容姿をしていました。
◉ 中国における「禿」や見習いの役割
中国において、妓楼の見習い少女に対する明確な用語としての「禿」は、日本ほど明文化されていません。ただし、妓楼の構造としては、やはり「階層的な育成制度」が存在し、見習いや下働きの少女たちは、年長の妓女たちから芸事や接客の所作を学ぶことができました。
中国では妓女という職業が「芸妓」と「娼妓」に細かく分かれ、前者は教養・詩歌・楽器などの能力が重要視されていたため、見習いの段階から非常に厳しい教育が施されていたと考えられます。


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