【小説1巻・第24話 「誤解」】薬屋のひとりごと|ネタバレ・後宮制度を史実から読み解く

後宮ファンタジー

薬屋のひとりごと|第24話ネタバレと感想レビュー+中国史解説

作品情報

タイトル・著者・掲載誌

  • タイトル:薬屋のひとりごと
  • 原作:日向夏
  • 作画:ねこクラゲ・七緒一綺
  • 掲載誌:月刊ビッグガンガン/サンデーGX

ジャンル・世界観

ジャンルは後宮ミステリー×歴史風ファンタジー。仮想中国王朝を舞台に、薬と推理の要素が融合した知的サスペンスです。

導入(作品の雰囲気や魅力)

物語の特徴

後宮で下働きをする元薬師の少女・猫猫(マオマオ)は、ある日、皇帝の子どもたちが次々と病に倒れていることに気づく。毒の存在を疑った彼女の冷静な推理と豊富な薬学知識が、静かに謎を暴き始める――。その手腕を買われ、美貌の宦官・壬氏に見いだされてからは、後宮や宮中で巻き起こる不可解な事件の真相解明に奔走することに。 やがて、ただの薬師のはずだった猫猫の素性にも、ある秘密が浮かび上がる……。 ミステリーと歴史ロマンが交差する、知性と毒気に満ちた後宮エンターテインメント!

主人公・見どころ紹介

主人公は、元薬師の少女・猫猫(マオマオ)。後宮で下働きをしながらも、薬学の知識と冷静な観察眼で、次々と巻き起こる事件の真相を突き止めていく姿が魅力的。 決して表情豊かではないけれど、どこかとぼけた一面や、皮肉っぽいユーモアもじわじわ効いてくる個性的なヒロインです。 見どころは、ミステリーと人間ドラマの絶妙なバランス。 後宮という閉ざされた空間で起きる事件の裏には、人間の欲や愛憎が渦巻いており、ひとつの謎を解くたびに人物たちの思惑や秘密が明かされていきます。 美貌の宦官・壬氏との不思議な関係性も、物語にスパイスを加えるポイント。

ネタバレ内容(※注意!)

第24話

猫猫の三日間の里帰りはあっという間に過ぎた。同行した李白は、憧れの白鈴小姐と甘美な時間を過ごし、今後は緑青館のやり手婆に“生かさず殺さず”搾り取られる運命にあるだろう。
翡翠宮に戻った猫猫を待っていたのは、鋭い空気を纏った壬氏だった。ただならぬ気配を察した猫猫は、皆が見守る中で壬氏に「応接室で待っているぞ」と呼び出される。
応接室では、高順の姿もなく、壬氏と猫猫の二人きり。壬氏は里帰りの詳細や、李白からもらった簪の意味について問いただす。自身も猫猫に簪を渡していた壬氏は、李白の簪が“対価”として選ばれたことに納得がいかず、不機嫌を隠せない。
猫猫は壬氏への対価が思い浮かばなかったと答え、李白への対価を尋ねられると「一夜の夢」と返す。その一言に、壬氏は顔面蒼白となり、手にした茶碗が震えた。
部屋を出た猫猫を待っていたのは、腹を抱えて笑う玉葉妃と、呆れた様子の紅娘だった。
一方、壬氏の沈んだ様子を見た高順は「いつまでいじけているのですか?」と冷静にツッコミを入れ、仕事に戻るよう促す。誤解は解けたものの、壬氏の心にはまだ複雑な感情が残っているようだ。そんな折、下官が駆け込み、緊急の案件が持ち込まれるのだった。

感想・考察

感想

壬氏、あまりに不憫で愛しい……!
今回の壬氏は、もはや「やきもちの化身」と化していて、読んでいて笑わずにはいられませんでした。猫猫に簪を贈った張本人でありながら、彼女が李白の簪を「対価」として選んだと知ったときの動揺――顔面蒼白、茶碗を持つ手の震え、そして絶句……完全に“フラれた男”の表情でした。
そして猫猫の無自覚すぎる一言「一夜の夢」。これが壬氏の心をどれだけえぐったか、想像するだけでじわじわきます。それを知って爆笑する玉葉妃と、あきれる紅娘の姿も、コメディとして完璧なオチでした。
とはいえ、この一件を「誤解」で済ませるのは簡単でも、壬氏の中では複雑な感情が渦巻いていたことが伝わってきます。笑っても切ない、絶妙なトーンの回でした。

考察

この話は、壬氏と猫猫の「関係性のズレ」と「想いの非対称性」を際立たせるエピソードだったと言えるでしょう。
壬氏はすでに猫猫に対して強い感情を抱いており、それをどうにかして伝えようと試みてきました。簪というのもその一環です。しかし猫猫は、恋愛感情には鈍感なタイプであり、彼女にとって簪は“物理的な取引材料”でしかありません。しかも、壬氏の気持ちを無視したわけではなく、「壬氏への対価が思い浮かばなかった」と真剣に悩んだ末の選択でした。
つまり、猫猫なりに誠意を持って対応したつもりが、壬氏の心に刺さってしまった、という“すれ違い”の構造が見えます。
また、今回の件は単なる笑えるエピソードに見えて、実は壬氏という人物の脆さ、人間らしさ、そして真剣な想いを描くという点で、物語全体における重要な感情の伏線にもなっているように思えます。

演出・テーマの読み解き

この話に通底するテーマは、「感情の伝達は、対価では測れない」ということです。

簪は一見「好意の証」や「対価」として機能しているようで、実はそこに込められた想いや意味は、贈る側と受け取る側でまったく違って捉えられているというのが印象的でした。
猫猫にとって簪は“手段”であり、壬氏にとっては“想い”です。このズレは、どれほど合理的に行動しても、人の心が常に理屈で割り切れるわけではないという現実を映し出しているようでした。
また、壬氏が「誤解は解けたけれど、納得できない」という状態に陥っているのも、人の気持ちが論理だけで整理できないことの象徴です。

関連作品・おすすめポイント

類似ジャンル作品紹介

  • 後宮の烏(後宮探偵+神秘系)
  • 彩雲国物語(官僚試験×恋愛)
  • 王女の遺伝子(王族と陰謀のドラマ)

解説コーナー(史実や文化の知識)

やり手婆とは?vol.2

やり手婆とは?
「やり手婆」と呼ばれる理由
「やり手」の意味
「やり手」は、もともと「仕事ができる人」や「有能な人」を意味する言葉です。何かの仕事や交渉ごとを巧みにこなす人に対して使われます。特に商売や人の取りまとめに長けている人を指すことが多いです。

「婆(ばば)」の意味
「婆」は年配の女性を指す俗称で、必ずしも悪い意味ではなく「年配の女性」や「女性の管理者」というニュアンスがあります。江戸時代や明治時代の日本では、遊郭や妓楼での年長女性のことを指すことが多いです。

合わせて「やり手婆」
この二つが合わさって、「やり手婆」とは「商売や人の取りまとめに長けた年配の女性管理者」という意味になります。妓楼の中で実務的に仕切りを担い、交渉や管理を的確に「やり遂げる」女性たちを指す呼び名です。

つまり、「やり手婆」という呼び名は、「仕事や交渉を巧みにこなす年配女性管理者」という役割をストレートに表現した言葉なのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました